マンションやビルの劣化診断について
マンションなどの共同住宅やビルは、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または鉄骨造のいずれかになっていることが一般的です。これらの建物は非常に堅牢に造られていますが、年月の経過と共に風雨にさらされていますので、建物は当然のごとく劣化していきます。建物の寿命は明確には決められてはいませんが、概ね50年から60年程度と一般的には考えられていることもあり、概ね115年前後で計画的に修繕を行っていくことが望ましく、先ずは概ね10年程度で建物の劣化状況を確認するための劣化診断を実施することが望ましいと言えるでしょう。この劣化診断は建物の構造や仕上げ材によって異なりますが、調査の方法としては、外観目視(タイルや塗膜の浮きや雨水の浸水の有無を確認するための赤外線探査機を利用することもあり)、外壁を打診調査するための各種打診器具(打診音でタイルや塗膜の浮きを判断するパルハンマー、テストハンマー、コンクリートの強度を反発力で測定するシュミットハンマーなど)による非破壊検査と、コンクリート造の建物の外壁一部からテスト片抜き取り(鉄筋または鉄筋鉄骨コンクリート造の場合、コンクリートの中の鉄筋や鉄骨を保護するコンクリートのアルカリ成分がどれだけ確保されているかを測る中性化試験のため ※もちろん抜き取った後はコンクリートにより穴埋めし補修します)や、タイルや塗膜を引っ張り試験機による引っ張り試験(タイルや塗膜の付着力がどれだけ確保されているかを確認するため)などによる破壊検査に大きく大別されます。これらの非破壊検査および破壊検査を組み合わせて行うことで劣化診断を行い、その劣化状況によって具体的な修繕計画を立案するわけです。この劣化診断には厳密には特に法的な資格要件はありませんが、やはり一級建築士資格を保有し、特に劣化診断やその後の建物の改修の経験ができるだけ豊富な設計事務所や、改修専門業者などの専門家に依頼することが望ましいでしょう。
また、工事会社に見積もりを依頼するにあたり、診断結果をもとにして、できるだけ診断とその後の改修工事の依頼先を検討するのがよいでしょう。 なお、この劣化診断は、あくまで建物自体にもともと欠陥(瑕疵)はなく、経年による劣化具合を確認するのが一般的であり、また建物の構造体を主に確認し耐震性を診断する耐震診断とは異なり、外壁や屋根などの建物の表面(仕上げ材)をメインにした調査です。