用途変更を伴う大規模改修
建築物の改修工事は用途変更を伴わない仕上げや設備の改修だけなら、ほとんどの場合、建築基準法による確認申請を行う必要はありません。しかし、使用する用途の変更を伴う場合は確認申請が必要な場合があります。建築基準法においては特殊建築物といわれる防火避難に関して考慮を要する建物の分類がされていますが、その分類のグループが異なる用途に変更する場合は、確認申請が必要となります。
確認申請が必要な用途変更の一例として、事務所ビルを共同住宅の用途に変更する場合が挙げられます。用途変更を伴う改修は大規模改修になり、必要な図面と書類を揃えて確認申請を行わなければなりません。事務所ビルを共同住宅に変更する場合は、共同住宅を規定する建築基準法に適合させるような改修を行う必要があります。事務所ビルと共同住宅のそれぞれに対する建築基準法の規定の違いは、構造的なものと意匠的なものに分かれます。
事務所ビルと共同住宅では構造計算に必要な積載荷重が異なります。建築基準法に規定される積載荷重は、共同住宅に求められている荷重よりも事務所ビルに求められている荷重の方が重く、共同住宅への大規模改修は構造的には可能となります。ただし、旧耐震で建てられた建物は耐震補強が求められることがあります。逆に、共同住宅を事務所ビルに用途変更することは、積載荷重の件から難しいと言えます。
事務所ビルを共同住宅に用途変更する大規模改修を行う場合は、意匠的な基準にも適合する必要があります。共同住宅には事務所ビルにはない、さまざまな基準が定められていますが、廊下幅や階段の設置など避難にすることは、改修での変更が難しい部分なので詳細な検討が必要です。避難に関する規定は建築基準法以外でも自治体による条例でも規定されている場合があるので検討が必要です。共同住宅は住宅であるために、窓から採光をとることが求められます。
国は都市中心部への住民の回帰を促すために、事務所ビルを住宅に変更しやすいような建築基準法における改正を行っています。共同住宅の居室の採光は、部屋が2部屋の場合、通常、部屋を仕切るためには開放できる建具等で行わなければならないとされていますが、商業地域等に建つ事務所ビルを共同住宅に改修する場合は、開放できない窓等を設けても良いことになりました。
事務所ビルを共同住宅に改修する場合は、給排水設備の配管の問題や、新たな消防設備の設置が必要となる場合もありますが、条件さえ整えば用途変更を伴う改修は不可能ではありません。用途変更を伴う改修は、どの会社でもできるわけではなく、建築基準法の知識と、大規模改修の実績を積んだ会社にして初めて可能となります。